地元の人たちから愛される井泉・金武大川
那覇空港から車で約1時間、沖縄県のほぼ中心に位置する金武町には「長寿の泉」と伝わる「金武大川」とよばれる場所がある。
ここは1992年(平成4年)の5月7日に、金武町の指定文化財に登録をされている歴史的名所である。
沖縄では水は神の宿る神聖な場所として考えられており、井戸水や水の湧き出る近くには、御嶽とよばれる拝所が設けられていることも多いものである。
ここ金武大川は並里部落の中央に位置しており、地元の人の大切な水源として親しまれてきた。
今でもコンコンの水が湧き出ており、1日の湧水量は1000トンを超える清涼感たっぷりのスポットである。
井泉は干ばつ時には、渇水することがなく、余った水は武田原に注がれ、稲や水芋を育てるのに役立てられている。
今ではペットボトルやポリタンクを持って、遠方からこの水を汲みにくる人もよく見かける。
金武大川の向かいにある大川児童公園や、近くの大川西公園には水遊びができるスポットもあり、合わせて足を運ぶ人も多いスポットである。
地元の人の憩いの場
金武大川はウッカガーともよばれ、琉球石灰岩を基盤とした地下水が湧き出る代表的な泉である。
それが整備されたのは大正12年、まだ上水道が普及していなかった時代である。
衛生上の見地から改修計画金武並里両区で経費を負担し、大正13年1月に竣工された。
コンクリートで用途別に区切り飲用水として利用されたほか、近くに男女別の水浴場を設け、道路下方は洗濯場や芋洗い場として構築され、周辺住民の生活と密接に結びついていた場所である。
当時は重要な水源としてはもちろん、元旦の若水を汲んだり、夏には海水浴場を楽しむ、朝や夕方には水を汲みにやってきた人たちが交流したりと憩いの場であったという。
しかしながら長い年月とともに老朽化が進み、平成2年3月に改修されて現在の姿を見ることができる。
周辺環境や生活スタイルの変化によって、幾度か補修工事がなされてきたが、先人たちの知恵の財産として、今も大切に受け継がれている。