沖縄地方に伝わるシャーマン
近年占いやパワースポットブームの影響を受けて、県外の人がユタのもとを訪れて、人生の迷いや相談をしにくる人も増えてきているという。
このユタとはいわばシャーマンであり、霊媒師である。
日本には東北地方や沖縄地方を中心にシャーマンの存在が顕著であり、東北地方では「イタコ」、沖縄地方では「ユタ」をイメージすると分かりやすいかもしれない。
ユタはそのほとんどが女性であり、古来から沖縄人の生活の中に生きてきた、特別な存在である。
ユタは一見すると普通の格好をして、普通に暮らしていることから、外見だけでは判断できないものであるが、沖縄の聖地や御嶽などではユタが祈りを捧げている光景を目にすることも多いものである。
ユタの語源については諸説あるが、「ユンタ(しゃべる)」に関係しているという説が有力であり、神人(かみんちゅ)から分化したと考えられている。
今回は沖縄の社会で根強く生きてきた、「ユタ」についてご紹介していきたい。
ユタの役割
沖縄では「ユタ」のほかにも「神人(かみんちゅ)」、神人の中でも格が高い者を「祝女(ノロ)」と呼ぶ。つまりユタと神人の違いがやや分かりにくいのだ。
神人や祝女は、主に御嶽、グスク、遥拝所などの聖地において、祭祀や行事を執り行うものをさす。
一方でユタとは、家族や集落に関する運勢、除霊、吉凶の判断などのアドバイスをする立場にある。
ユタは先祖、死者、供養などに密着した存在であり、沖縄の暮らしの中に深く根付いた存在である。
ユタに相談をするのは個人、家族のみならず、ビジネスマンや経営者などの男性も多い。
ユタに相談した際には、その費用を支払い、それもやや高額になるケースも多い。
しかしながら結婚、恋愛、健康、商売、引っ越し、病気などあらゆる物事に対して、先祖や死者からのメッセージをひもとき、それをもとにアドバイスをしてくれる存在である。
沖縄では人生に迷いが生じたときや、自分自身では判断ができないときにユタの判断を仰ぐ人は多く、これは「ユタ買い」と呼ばれている。
沖縄には「医者半分、ユタ半分」という諺があるほどに、医者も時にはユタを勧めることがあるのという意味である。
神人とユタは一見すると、正反対の存在のようにも思えるが、琉球信仰の根底を両方が支えており、琉球社会になくてはならない存在である。
しかしながら近年はユタではない者がユタと名乗り、霊的なアドバイスをしていたり、もしくはスピリチュアルなヒーラーとして商売をしているものもおり、それが問題視されている。
特に県外から訪れる観光客にとっては、その判断が難しいところである。
ユタの修行
ユタは修行をする中において、「カミダーリ(神障り)」とよばれるものがある。
これは、ユタになるまでに必ず経験しなければならない、いわば関門のようなものである。
これには必ず原因不明の病気、体の不調、食欲減退などが続き、それを乗り越えてユタとしての一歩がスタートするのである。
そして死者や先祖からの声を聞き、人様にアドバイスできる存在となっていくのである。
「カミダーリ(神障り)」とは、ユタとしての宿命に反抗しようとしたり、ユタとしての生活に不安を感じていると、この「カミダーリ(神障り)」に襲われることが多いといわれている。
つまりユタとはこの世に生を受けたときからの宿命であり、避けては通れない道なのである。
つまりユタとは占いとは異なり、もっと根深い宿命や信仰などが根底にあると言っても過言ではない。