親戚総出でお祝い!「トーカチ」
沖縄では本土と同じように88歳の米寿のお祝いが行われるが、これを「トーカチ」と呼ぶ。
沖縄では米寿という呼び方よりも、この「トーカチ」と呼ぶことが一般的であり、旧暦の8月8日に行う。
トーカチとは枡に盛った穀類などを掻き落し平らにする竹製の道具「斗掻(とかき)」の方言であり、17世紀ごろ薩摩から伝わった長寿を祝う風習である。
お祝いに来てくれた人には、一人一人にこのトーカチを配っていたことから「トーカチ」と呼ばれるようになった由来もある。
かつて今ほどに寿命は長くなかったことから、このトーカチのお祝いは集落全体でお祝いをする一大イベントであったという。
今でも数十人、中には数百人の親戚が集まってお祝いをするほどに盛大に行われることもあり、沖縄の集落や親せきの奥深い付き合いを知ることができる。
トーカチ祝いの儀式
トーカチ祝いでは、床の間近くに大きなザルにお米を盛り、それに赤い紙を貼った斗掻をさしてお祝いの準備が行われる。
お皿にはめでたい行事には欠かせない結び昆布、縁起物に欠かせない鰹節や塩などもお供えされる。
米寿のお祝いをする人は黄色の紅型衣装をまとい、お祝いにやってきたお客さんは鰹節、塩、昆布を手の平にのせて長寿をあやかる儀式が行われる。
そしてこのトーカチのお祝いに欠かせないのが模擬葬式である。
お祝い当日の夜中に米寿でお祝いをした人の模擬葬式が行われる。
この儀式はあまり長生きをすると子孫が魂を抜かれてしまい長生きできないとか、子孫繁栄できないといわれている。
この模擬葬式はとてもリアルなもので、本人に死装束を着せて布団の上に寝かせて家族が泣く真似をするところからはじまる。
そして日付が変わると三線や太鼓が鳴り響き、本人は飛び起きてカチャーシーを踊り、長寿を親戚一同でお祝いをするのである。
まさにこの儀式によって「生まれ変わった」を意味しており、新しい「誕生」を意味している。
またトーカチのお祝いでは盛大に御馳走が振る舞われ、親戚みんなで頂くことも習わしである。
赤飯、中身汁、天ぷら、紅白饅頭や「まちかじ」と呼ばれる琉球菓子も用意される。
この「まちかじ」とは「松風」の方言読みで、焼き菓子の一種で結納やおめでたい席に用意されるお菓子である。
小麦粉に砂糖と食紅を加え、平たくのばして胡麻を散らした甘いお煎餅のようなものである。
これはなかなか一般の家庭で作ることが難しいことから、一般的にはお店で購入してくることが多いものである。